銅版画 No141 (製版~刷り)

1 製版 銅板を用意します。角を削り、プレートマークを生成。銅板の下にあるものは、「クッサン」という道具で、エングレーヴィングで使用する専用の道具です。学生時代に作ったもので、かれこれ結構長い間使ってます。真っ黒です。こういう感じ、好きです。ただ、ボロがきてます。

2 アウトラインを彫りこみます。きっちり彫るパターンで最近は定着していますが、そろそろやめてみようと思っています。実験的にいろいろと試そうと思っています。

3 銅板は手で触れたり空気中にさらし続けると、表面が変色してしまいます。彫る時は、変色してもらうとありがたいです。版表面がピッカピカだと光が反射して画がどんな調子かわかりずらいったりゃありゃしない。

4 制作し続けるとこのよう変色していきます。銅板はとにかくデリケートなので、制作し続ける中でいろいろ表面的に変化していきます。内部を彫っていきます。

5 私は何より人物の顔をしっかりと彫るようにしています。顔が一番大事で、特に「目」は最重要ポイントです。目の彫りは何より丁寧に、しっかりと彫ります。

 

6 ルーペで見てみるとこんな感じです。

7 カメラではうまい具合に取れないですが、かなり細かいです。紙幣の肖像画の目を見てみてください。くるくると線が引かれていると思います。あのクルクルの中にいろんなもんがはいっています。あれはいい。こういう細かいところがしっかりできていると、よく見えます。

7 彫り進めます。線のラインは、物体の表面に沿うような感じで引いていきます。表層的に彫るという感じを意識しています。

細い線ほどより多くの線を彫ることができ、その分詰め込める情報量が多くなりますが、あまり細い線は隙でないため、太い線でできる限り表現するスタイルでやっています、線の間隔の幅・交錯線を組み合わせて表現の変化をつけています。

太い線であればあるほど、刷りやすいし、インクの抜けができずらい。

8 イイです。すばらしい。かわいらしい!

9 銅版画は一度彫ったら修正できません。そのため彫れば彫るほど情報が組み込まれてよくなるということはありません。限られた線でどこまで表現するか、という感じです。

というより、イイ。

10 進んでいます。ほりほりします。

11 岩の部分の彫り。線の溝は二次元でなく三次元です。凹凸ですので、光が反射しまくります。それが原版の美しさにつながるのですが、画がどんな調子かわかりずらいので結構厄介です。

12 この角度、イイですね。エッチングやメゾチントではこんな版表面にはならないでしょう。エングレーヴィング特有の美しさです。エングレーヴィング技法はもともと貴金属の彫金が発祥ですので、原版が圧倒的にきれいです。原版について、エッチングやメゾチントはエングレーヴィングと比べて結構お粗末に見えたりします。

13 彫り 終了。

別の角度から。

14 版を磨きます。

さらに磨きをかけます。ぴかぴか。製版終了。

15 刷り 今回、今までに使用しているインクが無くなり、通販で買おうと思ったら、在庫がなくて、昔買ったインクを使うことにしました。

しかしこのインク、すでにヤバイ気配を感じています。3年前くらいに使っただけのインクであることはよい。しかし、このインク、エングレーヴィングの刷りにあっているのか。前に使った時、使えなかったから残しておいただけのインクなんじゃないのか。という不安しかありません。

 

16 インク練り インクは多分そのまま使ってもよさそうですが、私は基本的にする前にインクを練ります。粒子的なものを練ることで柔らかく、溝に詰め込まれやすいようにしたいという気持ちからです。

17 インク詰め

18 インクふき取り

19 プレス機のもとへ。

エングレーヴィングの原版が最もよく見える瞬間が、この時です。美しい。スバラシイ

たたずまいが素晴らしく美しい。これだけ美しい版なんだ。刷り上がりもたいそうに、よいだろう、と思うと、痛い目を見ます。たいてい。

紙をのせます。

プレス機に通します。凹凸ができます。

めくる。ドキドキの瞬間です。

まぁこんなもんか。って感じです。最初は丁寧にインクをふき取ったりするのですが、100枚もする中で、枚数を重ねるうちに適当になっていきがちです。

インクがいままでと違うので、やっぱり調子が違う。ささいなことですが、やっぱり気になってしまう。

何より気になるのが、線の溝の、インクの詰まり具合が微妙に違っていて、イマイチです。今までの感覚通りにインクを詰めると、詰込みが甘い感じです。

100枚ほど、死ぬ気で刷りました。

一週間ほど乾燥させ、サイズを整える。カットしサインを記載。

完。