銅版画 No157 萌え×アメリカ切手

萌えキャラと2セントのアメリカ切手をモチーフに制作します。

 

 

 

 

銅版画は細密な彫りで表現されているので、手に持ってみるくらいの距離では画面が映えるが、1メートルくらい距離を置いたりすると、版画自体の小ささも相まって地味に見える。

 

版画は単体ではパワー不足になりがちである。

小さくても破壊力のある銅版画にするには、「彫りの精度」と「密度」を高めるしかない。

 

実物の紙幣並みのクオリティーにできればそれに越したことはないが、無理である。

 

が、可能な限りそれを目指さなければならない。

だが、職人並みの彫りを実現するには、技術的な問題はもとより、なにより大きいのは精神的な問題だと思います。

 

 

だからかわいいを求めていく。

経験上、おそらく、萌えかわいいと背景MAX黒は相性がいい。

 

背景MAXの黒を置くことで、中央の萌えキャラは中間色のグレーになり、紙の部分が白で分類され、遠目で見てもバランスが良く画面が映えやすい。

さらに、萌えかわいいキャラの性質=陰影が薄く立体感に欠ける、ことから全体像で見たときの弱さを背景のマックス黒と紙の白でカバーしやすく、中間色のグレー表現との相性がいい。

 

さらに、線描できめ細かい表現が特徴の萌えキャラは銅版画の線描がとの相性は言わずもがなである。

かわいさを維持し、全体で見たときの弱さをカバーできる。

これらを考えると、紙幣・切手のデザインと製造と萌えキャラの相性はバツグン。

背景のMAX黒は三回、線を重ねて彫る。

これが大変で、ほぼ一日かかってしまう。

線が余白に突き抜けてしまうという最悪の事態は避けなければならないからだ。

 

三回の交錯線はおそらく紙幣と切手の表現には使われていない。

多分、交錯線は二回までとしているようだ。

 

三回もすると黒は強くなるが線がつぶれがちになって、線というより面になってしまう。

 

萌えキャラの肌は、最も彫るのに精神を使うが、最も楽しいところでもある。

 

曲線を用い、肌の形にそって表層的に彫る。

微妙な明暗は、線の間隔を大きくとった曲線の交錯線で彫ってつける。

 

職人は線と線の間隔の違いでさらに細かい明暗をつけていくが、それは技術的に無理である。

製版を終え、磨く。

原版は、やはりすばらしくきれい。

版画にもさまざまな種類があり、版画というからにはどの版種にも原版があるが、基本的に原版は表に出ることはない。

刷りで酷使するので汚かったりボロボロだったりしてみるに堪えない状態になってしまうからだ。

だが、銅版画のエングレーヴィングに関してはそれが全く当てはまらない。

金属に彫刻するという単純なシステムだから、版表現にごまかしがきかない分圧倒的に頑丈で、美しい状態が維持される。

 版の耐久力がその他版種を比較にならないので、それこそが紙幣・切手の製造を一任した版画である理由の一つだ。

インクを詰め、プレス機に置く

紙を置く。

刷る。紙が版の形にへこむ。相当な圧力がかかっている。

切手と萌えの組み合わせは、相当にいい。しかし、飽きる。

様々な視点から手を加えて、いろんな工夫を取り込ませていこうと思います。

葉に2020

157(No)

NS

接写が生きる。接写で見るインクの質感、盛り上がり、線の精度は素晴らしい。