萌×和×日本円 10/12作目
制作ペースを上げて制作する。
製版。
紙幣部分はいつも通りに彫る。
ただ背後の面の彫りは、点描を使った。
微妙な明暗でいつもは線で彫っていたが、点描で表現した。
点描は銅板上ではよく見えなくて、どんな感じででるかいまいち想像できない。
刷ってみると、案外しっかりとでていたりして表現の処理が難しい。
萌えキャラ部分。
銅版画の彫りには、「職人彫り」と「絵画彫り」の二種類がある(と自分が思っている。)。
職人彫りは造幣局の職人のやり方で、線の構成をしっかりと設計して線の太さをテクニカルに変化させて彫る。
絵画彫りは職人彫りと比べて鉛筆で描くみたいな感じで彫るやり方。彫るたびに銅版画上の画をみて、それに応じて彫り足したりする。あくまで職に彫りと比べると自由度が高いってだけで、それでも職人的な感じはある。
萌えキャラ部分は絵画彫りで彫る。特に「目」と髪。
髪は一本一本の髪の毛を一本一本線で彫るように、目はより存在感を強めるように描画を繊細に彫る。
絵画彫りは、彫ってて非常に疲れる。なんかよくわからないが、たいそうに疲れる。職人彫りのがいくぶん楽。
かっちりとした彫りではなく、自由度のある彫りをするので刃の消耗が激しく、その分研がなければならないのが大変。
見てください。この顔。
絵画彫りじゃないとできないです。職人彫りではこういう繊細な感じにはならない。職人レベルの彫りであればできるが、そこまで彫る技術はない。絵画彫りだからこその繊細さ、柔らかさ、美しさ。
磨く。
インクを詰める。
プレス機に置く。
紙幣部分の点描がどうでるか気になったが、なかなか良かった。やわらかい感じでちょうどいい。
かわいい。絵画彫りだからこその柔らかさと繊細さ。
もっと表現力を高められると思う。もっとかわいさに磨きをかけられると思います。
髪の彫りはさすがに上達した。彫り過ぎず、職人的な処理になりすぎず、微妙なところで落ち着いている。
和服部分の布の感じとか、まだなんとかやりようがあると思う。
職人彫りと絵画彫りの間で行ったり来たりしてる感じがある。
全体的にグレー。線が細く、繊細な彫りが多い。
いままでだったらあんまり好きになれない感じだったが、こういう感じもありな気がしてきた。
しっかりと刷りさえすれば、弱い線もちゃんと出るし形になる。
●銅版画の道具紹介 砥石
エングレーヴィングの制作で「研ぎ」は「彫り」に並ぶ最重要技術です。
エングレーヴィングの職人は、「彫り研ぎ10年」といって、彫りと研ぎに10年費やしてようやく一人前と言われているそうです。
刃の研ぎに使用するのが、この砥石。
銅版画の制作ではいろいろな技法で研ぐ時があるが、砥石を使う技法はエングレーヴィングだけだと思います。
オイルストーン
表が中研、裏が荒研用になっている。
ビュランの刃は彫るたびに劣化する。劣化すると刃の食い込みが悪くなり、彫りづらくなる。そのたびに刃を研ぐ。
造幣局の職人は、一本の線を彫るたびに刃を研ぐと聞いた。
アーカンサスオイルストーン
上のオイルストーンは人工の砥石で、こちらは天然の砥石。こっちのほうがキメが細かい。
意外とガンガン研げる。昔から使われている伝統的な砥石。
研ぎに順序は、荒研(オイルストーン裏)→中研(オイルストーン表・アーカンサスオイルストーン)→仕上げ研ぎ(エメリーペーパー)の順で研ぐ。
よほど刃にダメージがなければ、中研ぎ→エメリーペーパーで十分。
非常に忍耐のいる作業で、何百回と刃を上下に往復して研ぐ。初心者はここで折れる。
この技法で制作する以上、嫌というほどしなければならない苦行。これがしっかりできなければ、気持ちよく彫ることは絶対にできない。
仕上げ研ぎ(エメリーペーパー)
銅板を下にひいて使う。
仕上げ用の研ぎ。銅板を下にひかないと、しっかりと刃の側面が平坦にならない。
この研ぎをすると、刃は鏡面状になり光沢を帯びるほどになる。そこまで研げば彫れる状態になる。