二か月~三か月にかけて、萌×制服×日本円のテーマで12~15作品制作していきます。
今回は日本札のモチーフもできるだけ限定して、10000円、5000円、1000円を一通り制作していくつもりです。
1製版
アウトラインを厳密に彫るやり方は、得意なスタイルだが、前回ではそれをやめようとしてた。
アウトラインをぼかしたほうが、表現の幅が広がっていいが、それは自分に合わない。
実物の紙幣はこのあたりの部分はいろいろ仕掛けが仕組まれてる。角度によって10000円の文字が浮き出てきたり、なんか光ったりしてる。
数字を微妙に見え隠れするような線構成は理屈ではできそうな気がする。
ただ、かなり機械的で精密な彫りじゃないとできない。
以前12作品を制作しているので、さすがに日本円札のデザインに慣れてきた。
実物と同じ線構成では彫っていないが、それっぽくする彫り方は慣れてきた。
幅の太い文字だと、線ではなく面で彫る。線で面を表現するのは難しい。
線が一本一本精度がないから、全体で見たときの面にムラができる。
実物の紙幣には当然ながら全くムラがない。
手元に実物の対象があると、制作の上でだいぶ違う。
より細かい部分を見て知ることができるし、自分の線と見比べてどう違うかを知れる。
実物はケタ違いに線の質が高く、精密で工夫が施されている。
真似してやってみたくても、技術的にキツイ。
もっと時間をかけてそうとうゆっくりじっくりほらないといけない。
作り始めということもあり、全体的にかなりしっかりと彫った。
職人的な彫りで。
萌えキャラ部の彫りも職人的な彫りでいく。
結果的に言うと、より職人的により線の質を高くより部分的な彫りをしたことで、版画的な細かい部分は良くなったが、全体で見たときのアンバランスさがでてしまった。
一本一本の線はしっかり彫ってある。
彫り 終了
版を磨く
研磨剤で磨く。青棒という荒めの仕上げ研磨剤。
その後、ピカールという青棒よりも粒子が細かい仕上げ研磨剤で磨く。
インクを詰める。
正直ピンとこないです。
彫りも悪くないし、萌えキャラもそこそこかわいいし。
全体で出てきた時の微妙さが、どうも気になる。
職人彫りらしく、ディティールはしっかりしている。でもなんかピンとこない。
どこもかしこも職人彫りすぎて、一様に一面な感じがする。
平坦というかそんな感じ。
この辺のディティールは、見栄えこそ微妙ではあるが、細かい数字の彫りなどのディティールはいままでにない完成度。
この辺も非常によく彫れている。
文字も、その背後の装飾も悪くない。
むしろいままでの経験がそのまま生きている。
ただ、それだけ。
近くで見るとかわいい。
ディティールもしっかり彫れているのに、全体で見たとき微妙になるのは、やっぱり職人彫りのせいかもしれない。
厳密に線構成を計画して、機械のように彫ればこんな感じにはならないかもしれない。
白黒のバランスが悪い。
彫りにだけ意識が行き過ぎて、白黒のバランスをまったく考えてなかった。
ただ白黒のバランスを考えると、彫りが疎かになりがちになる。
まぁ、悪くはない。決して悪くはないが、よくもない。という感じです。
紙の着色をしようと思って、絵の具を溶かした溶液に紙を湿しておいたのですが、数日後、乾燥にカピカピになって張り付いてしまい、失敗しました。
出品用の写真をとってて思ったんですが、やっぱり版画は面白いですよ。
版画単体で見たときのパワーは低いです。一枚では弱い。が、それが束になった時、面白い。
それぞれ制作年や、テーマもコンセプトも違う。それぞれ違った版画が一堂に会すると、妙な一体感が生まれる。すべて銅版画でエングレーヴィング技法の作品で萌えをテーマにしたものというのは一貫してるのも、いい。
油絵や日本画などの絵画にはない、版画の強みは「複製」できることだ。デジタル印刷ではない複製性は、版画特有の職人的な要素で、なかなかいいと思いました。完
●銅版画の技術 ビュランの刃
銅版画の「エングレービング」技法について、制作の中で発見したことや思い出したことなど、技術的なことを書いてこうと思います。
エングレーヴィングで使用するビュランの刃先
刃先の断面の角度によって、線の出方や、彫り方が変わる。普通は90度の角度の刃を使う。
より細かい線を彫りたいときは、細い刃を使うか、角度が小さい刃=鋭角になっている刃を使う。(左画像)
鋭角になっている刃は線の強弱がつきにくく、幅が均一の線を彫れる。細く深く彫れるので、鋭い線がだせる。
90度の刃。
細すぎず、太すぎず、どんな線でも彫れる。
基本的に90度の刃を使えば問題ない。
ただ、研ぎが適当だとだんだん角度が狂ってしまう。
刃の角度が鈍角になった刃。線の強弱がつきやすく、ダイナミックな線を彫ることができる。
漫画のペン先で例えればGペンのような線表現ができる。基本的に漫画調な萌え絵は、アウトラインが最重要。線描で基本的な形をほとんど描写しなければならないので、良い萌え絵は線の強弱がふんだんに使い分けられている。
曲線が彫りやすい。線の強弱をうまく利用できれば、表現の質は格段に上がるが難易度が高すぎてうまくいかない。