No198、199は小さめの銅板を使って、軽い感じで制作した。
No197のような高密度の作品を制作した後は、何もせず時間を空けるか軽いものをいくつか作ってやる気を調整する。
胸部(スーツ)の階調がいい。
線が太く、間隔も広い。
軽い感じで彫ったものだが、ひねくれてないせいかよく見える。
階調をけっこう省略して彫ったけど、そんな風でもいい。
この線はビュラン(中)を使った。
太め。
極細を使ってもっと高密度にこれと同じように出来たらいい。
それがなかなか難しい。
←点描。 線と線の交錯線にある四角い空白部分に打ち込まれた三角形のこれ。
ビュランを垂直に立てて打ち込む。強く打ち込めば大きな三角形、弱ければ小さくなる。
そうやって強弱をつけて、微妙に階調を変える。
この技術は職人の技術で、紙幣や切手の肖像の彫りで使われる。
デューラーのような絵画的な画家はあまり使わない。
紙幣を見ていて気になるのが、点描が三角形ではないこと。
長方形というか、普通なら強弱がついて三角形になるはずなのに。これは特殊なビュランを用いているからだと思われる。
左が普通のビュラン。右が特殊なビュラン(多分)
まぁよほどの熟練の技術者にならないとここまで厳密に道具を使い分ける必要はないだろう。
●2020年が終わる。一年間銅版画を作りづづけた。いままでにないほど高密度に制作をしたと思う。
No174から版画の質が決定的に変わった。彫り・研ぎ・刷りへの理解と自信ができた。これを基盤にしてちょこまかとした技術を枝分かれしていくように伸ばしていこうと思う。
学生時代に教授に言われた「彫り研ぎ10年」という言葉、これは一人前にエングレーヴィングを扱えるまで10年かかるという意味だと思うが、来年で始めてからちょうど10年目になる。
自分が一人前とはとても思えないが、技術に対してそこそこ努力してきた身としては思うところがある。
2020年
No152~199
制作枚数47種