銅版画家の紹介

すごいなこの人!?と思った

銅版画(エングレーヴィング)の画家を紹介します。

 

①アルブレヒト・デューラー(ドイツ、1471~1528年)

いわずと知れたエングレーヴィングの神。

すべてのエングレーヴァーは、まずこの男の作品から技術を学ぶ。

彫刻技術の高さと細密描写の表現力は、ただただびっくりさせられるのみだ。

もともと細密描写の能力が群を抜いていたデューラーに、ビュランを持たせてしまっては鬼に金棒である。

幅が均一な細い曲線が多くみられる。菱形のビュランを主に使用していたのだろう。

表層的に引かれた曲線は、自由にあちこち行き来している。

超高密度な線と点描の連打。

デューラーの銅版画は、絵画彫りの象徴である。

デューラーの作品はあっちこっちの美術館で展示されているので、ご覧ください。

 

 

②ヘンドリック・ホルツィス(オランダ、1558~1617年)

職人彫りの象徴。

私が学生時代にエングレーヴィングに興味を持つきっかけになった銅版画の作家が、このオッサン。

デューラーとは相反して、強弱をつけた幅が太い曲線を多用する。肌の質感、ダイナミックな曲線、立体感に当時強烈に惹かれた。

紙幣や切手の肖像は、このスタイルで彫られている。

こんなにキレイで緻密に設計された銅版画がつくりたい!!と今でも思ってます。

線の強弱で作り出された階調はすごいキレイで、何度も真似して彫りました・・・。

この画家の作品も美術館の常設展示などでよくありますので、ご覧ください。

 

 

③クロード・メラン(フランス、1598~1688年)

エングレーヴィング技術を終わらせた男。

学生時代に町田版画国際美術館でこの作品を見て、腰を抜かしました。文字通り、技術を極め終わらせた男です。それを象徴するのがこの「ヴェロニカの布」だ。

この作品のすさまじい点は、すべての描写が一本の線によって描かれていることだ。鼻の頭から始まり、そこを中心にグルグルと渦巻き状に線が引かれる。交錯線、輪郭線、一切なし。

一本の曲線の強弱のみですべてを表現した、規格外の画家です。

職人彫り。歴史上の数多なエングレーヴァーの作品と比べても、明らかに異端な表現であり、一つの技術の到達点だと思われる。

↑この作品の動画。原版が映ってます。

●私は主にヘンドリックとデューラーから影響を受けてエングレーヴィングを始めました。その後、クロードメラン、ウィリアムブレイクといった西洋の画家を知りました。ここからは日本のエングレーヴィング作家を紹介します。

④渡辺千尋(日本、1944~2009年)

シュールな表現と技術力。学生時代に助手の方から教えてもらって、展示を見に行き存在をしりました。実物の原版を見て、圧倒されました。

当時、ようやく技術にもある程度慣れてきたところだったので、自分の作品との違いに心底驚いたことを覚えています。

エングレーヴィングの技法書や資料など見ても見たことがなかったこの作家は、どうやら独学でエングレーヴィングを学んだようです。一日に10時間制作すると画集に書いてありましたが、いまだに信じられません。絵画彫り。

↑私が銅版画の上にビュランを置いて写真を撮るのは、この画像を見て憧れたからです。

それにしても、この原版すげ~な。(-_-;)

⑤久保卓治(日本、1948~)

唯一、実際に会った本物のエングレーヴァーです。

大学院中退後しばらくしてエングレーヴィングを教わるため実際に久保先生に会いにいき、半年ほど技術を教わりました。

アトリエで実際に作品や原版を見て、ただただ驚き感動したことを覚えています。

版画というよりむしろ絵画という感じで、自分の版画と見比べて存在感の違いに驚きました。

プロのエングレーヴァーとしての技術力、描画力、尊敬と恐怖の心をもっています。絵画彫り。

↑一部分の画像。こんな風に、いつか彫れるようになる。って思ってた時期が、私にもありました・・・。

 

以上、5人の銅版画家でした。

全体的に言えることは、彼らは天才である、ということです。

すさまじい描画力と技術力を駆使した表現力。やればやるほど、力の差を正確に理解できるようになる。

この10年、技術に対して努力を怠ったことはない。しかし、レベルが違い過ぎる。

彼らから学べることは、どんなことでも貪欲に学ぼうとおもいます。(;+_+)   完