製版
試刷り1回目
いいモチーフの萌えキャラは彫ってる段階でかわいさを感じられる。
萌えキャラ彫ってるときの集中力は高いな~。
製版2
主に萌えキャラ周辺の草木を彫っていく。
エングレーヴィングの欠点というか弱点ともいえるのが、細密表現ができる代わりに細部を細かく彫らなければならないことがあります。
油絵や鉛筆画などはもちろん、同じ銅版画の技法であるエッチングやメゾチント、ドライポイントなどにはある程度、ディティール部分をごまかして描き進めることができる。
鉛筆画だったら鉛筆の芯の腹の部分をつかってこすったり、消しゴムでこすったり等。
草木のエッジをしっかり一本一本彫らなければならないのは、エングレーヴイングのめんどくさい点で大変です。細密表現は長所ですが、作業量や大変さでいうと短所です。
草木の部分は主に強グレーと黒、花を白と弱グレーでやってきます。
試刷り2回目
萌えキャラほど草木は彫ってて心躍ることはない。アウトラインを彫る分にはスカスカと気持ちよくイメージできるしいけるけど、形を詰めていくとだんだんイメージが濁っていく。
いざある程度出来上がって刷ってみると、ディティールはよくできてると思ったが全体で見たとき単調なグレーになってることに気づいた。
エングレーヴィングはモチーフのエッジが生きる。
いかにエッジを効かすかでエングレーヴィング表現を高められる。エッチングでもメゾチントでもドライポイントでも不可能な表現だ。
全体で見るとグレーが強い感じがする。
もっと白と弱グレーを意識すると階調に幅がでるだろう。
製版3
背後の草木を彫り進める
萌えキャラを生かすため強い黒にしていく。
強い黒を作るにはハッチングを二重三重と重ねるのが良い。
鉛筆や筆で描いたりする場合はただ線を重ねていけば黒くなるが、エングレーヴィングの場合はハッチングの方向を階層ごとにズラす。
左の場合は右と斜めと縦方向のハッチングが三重になっている。
ずらさないとまともに線が引くことができない。
ハッチングの制限は銅版画のエングレーヴィングやエッチング特有の線表現だ。
↑試刷り3回目
背後の草木を主に、萌えキャラ周辺を微調整した。
結構彫り込んだつもりだったが、微妙な感じになった。強い黒の部分が単調な感じがして、部分的に四重ハッチングを重ねて黒の階層をつくり、草木に奥行を持たせたい。
製版4
手前の草木と周辺、奥の部分を彫っていく
背後の萌えキャラ。
手前と奥とで強弱をつけないといけないので、弱めの線で弱めの階調を作る。
奥の描写は全部弱線で彫る。
試し刷り4回目
油膜(うすいグレートーン)が全体にかかっていて見にくい。最終的に刷るときは版を磨くので油膜はなくなる。
正直終盤になると頭が回らなくなってよくわからなくなる。周辺の草木はもう完成でよいだろう。
背後の部分は萌えキャラ部分を若干修正し、後は流れでいく。
製版5
奥の部分を弱で彫っていく。
製版終了 研磨剤(荒)で磨いたのち、ピカールでさらに磨きをかける。
原版終了。表面のきらめきはMAXではない。
というのは、今回は描画量が多いのでバーやめくれをスクレーパーで削る頻度が多くなり、表面に微細な傷ができてしまった。よって表面がMAXのぴかぴかという風にはならなかった。
だからといって特別変化はないです。
高密度のため、非常にキレイです~。
刷り
インク練り
ローラーを使い版上にインクをのせる。
ゴムヘラでインクを線の溝に詰める。
このように画面全体をヘラで詰める。
上手く詰めるコツは、ゴムヘラのエッジを効かせること。
線が浮き上がってくるようならOK。
寒冷紗で表面のインクを押し込むようにしてふき取る。
最後の締めみたいな感じでインクを詰めると同時にふき取る。
人絹で表面の油膜をふき取る。
この段階で空白部分は完全な白になる。
プレス機へ
紙は前日に湿しておく。
紙の全面にしっとりと湿り気を帯びた状態がベスト。線がしっかりと出る。
湿しすぎても乾きすぎても良くない。
湿しすぎると刷った時ラシャとフェルトが水分を過剰に吸い取りプレス圧が変わりやすくなる。
乾きすぎだと紙質が固すぎて線がでない。
版の上へ
フェルトとラシャをしき、刷る。
・・・・(; ・`д・´)
・・・・・・・・・・(; ・`д・´)
(#^.^#)イイネ!
丁寧に仕上がりよいと思います!
萌えキャラは文句なし、手前の草木も文句なし、奥の草木がもうちょっとなんとかなったかな、って感じです。
萌えキャラの顔は点描で微妙にボカしてやると良い。
これ以上点描の密度を上げることもできるが、どうだろうか。劇画みたいに強烈な陰影は可愛さを消滅させるのでしたくない、しかしある程度線の密度をもたせ、より肌の質感が欲しいと思ってはいる。
一年前と今とで決定的に違うのは、MAXの白と点描の使い方だと思います。
おかげで明暗の弱部分が格段に良くなった。
微妙な階調の違いを点描と白で表現できている。
線だけの表現は階調が固く、これだけ細かいモチーフでは大味になりすぎる。
この辺の影の彫り方はそこそこうまいと思います。
エングレーヴィングは突き詰めてくと影を彫る銅版画である。
影は面で表現する。よって、線を連続させるハッチングを駆使して彫る。
影のハッチングの方向を事前に意識し(この場合縦線)、その方向に線を引かないようにしてモチーフの内部を彫る。
奥の萌えキャラ。
クロスハッチングは使わず、ハッチングと白、点描のみで描く。
あんまり細かいのはかわいく彫るのは難しいが、これはOK。
葉など、正直どうでもいいと思うとこでもわりと彫った。
アウトラインをしっかり彫ればそれでいいやくらいに思ってはいたが、弱で微妙な階調を作ってやるとだいぶ見栄えが違う。
黒の部分は三重のクロスハッチング。
黒は難しい。
ここが微妙な点だった。黒の部分を、今の弱部分みたいな感じの完成度になればもっと良くなる。
奥の草木。こういう部分は明確に表現するのが難しく、ぼかすしかない。ぼかすのが苦手なのがエングレーヴィングである。
今回の場合はわりとうまい具合にぼかせたと思われる。
手前の石こうがなんだかんだでいちばんよかった気がする。
総評
かなり時間をかけた。草木が厄介でした。
萌えキャラもかわいいですし、サイコーですよ。これは。
それだけです。完
〇使用した道具
ビュランの刃の太さで彫る線の太さが変わる。細ければ弱い線が、太ければ強い線が出る。
小中大の刃が3本あればよいというわけでなく、同じ太さでも刃の長さや形で使い分ける。
〇A・・・細4本(極細×3、細×1)長距離を彫る刃、交錯線を彫る刃、かなり細密な彫りをする刃、どんな状態でもボチボチ使う刃がある。
より高密度な表現を目指すと一番使用頻度が高い。主に内部を彫る。顔や目、髪、葉の影など。
〇B・・・中3本(中細×1、中太×1、中1)単純なモチーフの内部や影をざっくり彫る時に使う。
〇C・・・点描用1一本
D・・・極太一本(強エッジ用) ガイドラインをがっちり彫り込む。極細と使い分けると効果大。
E・・・スクレーパー(中) 線のバーやめくれを削る。